司法取引の問題点
2015.08.06更新
松戸の弁護士の島田亮です。
昨日、刑事司法手続きの改正法案が、衆議院の法務委員会で可決されました。これにより、今国会で同法案が成立する見通しとなりました。
しかし、以前にも述べましたとおり、同法案には重大な問題が沢山あります。
特に問題が大きいのは、新たに導入される司法取引制度です。
司法取引とは、簡単に言うと、他人が犯罪に関与したことを供述する見返りに、自分の処分を軽くしてもらったりする制度です。
しかし、このような制度だと、自分の処分を軽くしてもらうため、嘘の供述をして第三者を犯罪に巻き込むおそれがあります。
例えば、今年3月に無罪判決が言い渡された美濃加茂市長の収賄事件では、別件の詐欺罪に問われていた会社社長と捜査側との間、事実上の司法取引がなされ、その結果、美濃加茂市長の収賄事件がでっち上げられたとも言われています。
自分の処分を軽くしてもらうため、無関係の第三者を事件に巻き込んでしまう。司法取引には類型的にそのような危険性があり、新たなえん罪を招くおそれがあるのです。
元々、今回の刑事司法手続きの改革は、えん罪をなくすという目的のもとで検討が行われてきたはずです。
ところが、その検討の結果、いつの間にか新たなえん罪を生み出すおそれのある制度が出来上がってしまったのです。
もしこのような法案が今国会で成立してしまいますと、捜査権限はますます拡大することとなります。
これに対処するため、弁護士には、最新の法改正や実務の運用を踏まえて、えん罪を防ぐための地道な活動が求められることとなります。