2015.08.21更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

逮捕勾留が適正に行われるべく、チェック機能を果たすのは、裁判官です。

ところが、現実に、このチェック機能がほとんど果たされていないことは、前回指摘した通りです。

 

このことは、私の地元の千葉地方裁判所松戸支部と松戸簡易裁判所でも、全く変わりありません。

少し古いデータを紹介します。

平成19年1月~平成20年10月の間、千葉地方裁判所松戸支部と松戸簡易裁判所で逮捕状が却下された件数は1件、勾留状が却下された件数は1件でした。

しかも、上記両件ともに、捜査側からの異議申立が認容されており、その結果、逮捕状と勾留状は全件が認容されていた訳です。

 

当時、私は、そのようなデータに接して衝撃を受けました。何とか、この現状を改善しなければならないと思いました。

その後、私は、このような現状を弁護士会でも報告し、裁判所に対抗する手だてがとれないかと考えました。

 

このような現状を変える方法の一つは、問題ある案件でその都度きちんと異議申立を行うことです。

異議申立がなされると、裁判所では、元の判断を下した裁判官とは別の裁判官が3名で再度判断を下さなければなりません。

問題ある判断にはきちんと異議申立を行うことにより、逮捕状や勾留状のチェックを行う裁判官に緊張感を持ってもらうことが重要です。

 

そこで、弁護士会では、特に若手弁護士向けにこのような現状を示し、きちんと異議申立を行うことに関する教育に取り組みました。

その結果、異議申立がなされる件数は、ここ数年で飛躍的に増えました。

そして、最近では、異議申立が認容されたり勾留状が却下されるなどの事例も、少しずつ報告されるようになっています。

 

今後もこうした取り組みを継続し、問題のある現状を改善して行かなければならないと考えています。

2015.08.20更新

松戸の弁護士の島田亮です。

  

そもそも刑事事件では、なぜ被疑者を逮捕勾留することが許されているのでしょうか?

その人が悪いことをしたから、罰として逮捕勾留するのでしょうか?

 

そうではありません。逮捕勾留することが許されているのは、その人が証拠隠滅をしたり、逃走したりするのを防ぐためです。

したがって、証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められない場合、逮捕勾留することは出来ません。

刑事事件の被疑者・被告人も、有罪判決が確定するまでは無罪であることが推定されます(これを「無罪推定原則」と言います。)。

逮捕勾留とは、無罪が推定されている人に対し行われるものですから、証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められる場合でなければ許されないのです。

 

証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められるかについて、チェックを行うのは裁判官です。

裁判官は、証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められる場合に限って、逮捕状・勾留状を発付することが許されています。

ところが、実際には、裁判官によるチェックはほとんど機能していません。

 

平成25年度の司法統計から数字を拾ってみます。

全国で勾留状が発付された件数は11万6181件であるのに対し、却下された件数は2308件です。勾留状が発付された割合は、98.05%と非常に高率となっています。

さらに凄いのは、逮捕状の発付率です。

全国で逮捕状が発布された件数は48万0432件であるのに対し、却下された件数は2546件です。逮捕状が発付された割合は、実に99.47%となります。

 

このように、逮捕状・勾留状の発付率が高率となっているのは、裁判官が、捜査側の言い分をそのまま鵜呑みにしているからに他なりません。

これが「人質司法」と呼ばれる現状を招き、取調べの中で自白が強要されるなど、違法不当な捜査が実施される温床となっているのです。

このような現状は、何とかして改善していかなければならないと思います。

2015.08.19更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

前回、仮差押えについてお話ししましたが、「差押え」と「仮差押え」は何が違うのでしょうか。

 

そもそも、当該権利があるかどうか(例えば、売買代金を請求する権利があるかどうか)は、判決によって確定します。

もっとも、裁判を起こして判決が確定するまでの間には、ある程度時間がかかります。そして、その間に資産を処分されてしまうと、判決によって権利があること(例えば、売買代金を請求する権利があること)は確定したものの、回収が出来なくなるおそれがあります。

そのような事態に対処するために認められているのが、仮差押えです。

 

仮差押えとは、判決によって当該権利があることが確定する前の段階で行う手続きです。

そして、仮差押えの場合、権利があることが確定していない段階で行うので、一定の担保金を納付する必要があります。

また、仮差押を行うことにより、相手が当該資産を処分することは防げますが、それだけで当該資産から回収をすることは出来ません。仮差押えは、あくまでも相手の資産を「凍結」するものに過ぎません。

 

一方、差押えとは、判決が確定した後に行う手続きです。

差押えの場合、権利があることがすでに確定していますので、担保金は必要ありません。

また、差押えの場合、仮差押えと違い、差し押さえた資産から回収をすることが出来ます。

 

このように、相手方から金銭を支払ってもらえない場合、通常の裁判手続に加えて仮差押えや差押え手続きを利用することによって、回収を図ることとなります。

2015.08.18更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

売買代金や貸したお金など、約束したお金を相手が支払ってくれない場合、どうしたら良いでしょうか?

この場合、まず考えるべきは、相手方に差し押さえるべき資産があるかどうかです。

差し押さえるべき資産とは、例えば、不動産、預貯金、給料等になります。

 

もし相手方に差し押さえるべき資産がありそうな場合、仮差押えという手続きを検討することとなります。

仮差押えとは、裁判を起こす前の段階で、裁判所の指定する担保金を納めることを条件に、相手方の資産を仮に差し押さえる手続きです。

 

仮差押えを行っても、相手方の資産から直ちに配当を得られる訳ではありません。

あくまでも「仮」の差押えなので、相手方の資産から配当を得るためには、その後、裁判を起こし、判決を取得する必要があります。

それでも、仮差押えをしておけば、その間相手方が当該資産を処分することを防げます。そのため、その後裁判をして判決を取得すれば、高い確率で回収を図ることが可能となります。

 

もし約束したお金を支払ってくれなくてお困りの方がいらっしゃいましたら、差し押さえるべき資産の有無を確認した上で、弁護士に相談すると良いと思います。

2015.08.17更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

逮捕勾留された被疑者が事実を否認している場合、弁護士はどのような活動を行うべきでしょうか?

 

最も重要なのは、その方と接見を重ねることです。

接見を重ねることによって、初めてどのような取調べがなされているかという状況が把握でき、弁護士として適切な対処法を助言することが可能となります。

 

多くの事件で、捜査側は、何とか被疑者から自白を取ろうとしてきます。この取調べ対応が、否認事件の場合は重要となります。

この取調べに弁護士が立ち会えれば、その都度、弁護士が適切な対応を行うことが出来ます。

ところが、現状、捜査側は、取調べに弁護士が立ち会うことを認めていません(この取り扱い自体に大きな問題があるのですが、そのことは別の機会にお話しします。)。

そのため、取調べには、被疑者自身が一人で対応する必要があり、接見の際にこの対処法を助言することが、否認事件では特に重要な弁護活動となるのです。

 

私自身、依頼を受けた刑事事件については、接見を重ねることを基本と考えています。

刑事弁護活動を行う限り、この基本をいつまでも忘れてはならないと思います。

2015.08.15更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

弁護士は、なぜ犯罪者の味方をするのですか?

犯罪者の刑を少しでも軽くしようとするのが、弁護士の仕事ですか?

 

時折このような質問を受けることがあります。

確かに、弁護士は、犯罪を犯した人の刑を少しでも軽くしようと努力します。

しかし、私は、自白事件における刑事弁護活動の目的は、その点にはないと考えています。

 

私は、犯罪を犯した人の弁護活動は、基本的に、その人が二度と犯罪を繰り返さないようにすることに向けられるべきと考えています。

そのためには、その人がなぜ犯罪を犯してしまったのかを、冷静に分析検討する必要があります。その上で、その人が犯罪を犯してしまった原因を取り除くべく、活動を行う必要があります。

 

もし、その人が犯罪を犯した原因を取り除くことが出来れば、その人が再び犯罪を犯す可能性は大きく減少します。

そして、再犯の可能性がどの程度あるかという点は、その人の刑を決める上で一つの事情となります。

当然ながら、再犯の可能性が高い人と再犯の可能性が低い人とを比べれば、再犯の可能性が低い人の刑の方が軽くなります。

再犯を防ぐための活動をすることは、結果的に、その人の刑を軽くすることにつながるのです。

 

私は、犯罪を犯した人の刑を軽くすることは、弁護活動の目的でなく結果だと思います。

何よりも大切なことは、その人が立ち直る環境を整え、二度と犯罪を繰り返さないように力を尽くすことだと考えています。

2015.08.13更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

今月初め頃、松戸警察署の留置所に勾留されていた男性が死亡したという報道がありました。

男性に目立った外傷はなく、司法解剖を行って詳しい死因を調査するそうです。

先月末頃には、和歌山県の拘置所で2名の被収容者が熱中症で緊急搬送され、うち1名の方が死亡したという報道もありました。

 

和歌山県の拘置所の件は、熱中症が原因なので、拘置所側で注意をすれば防げた事故と思われます。

非常に残念な事故で、再発防止のために必要十分な対策がとられなければなりません。

一方、松戸警察署の件は、報道だけでは詳細はよくわかりません。

もっとも、留置場内の環境に問題はなかったか、医療体制に問題がなかったか等、こちらもきちんと検証がなされなければなりません。

2015.08.11更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

相続が発生した場合に、まず考えなければならないのは、相続人が誰かということです。

まず、亡くなった方(被相続人)に配偶者がいる場合、配偶者はどのような場合でも自動的に相続人となります。

それ以外の親族については、第1順位「子」、第2順位「親」、第3順位「兄弟姉妹」と、相続順位が定められています。

そして、第1順位の方がいる場合、第1順位の人だけが相続人となり、第2順位、第3順位の人は相続人となりません。第2順位以下の人は、自分より上位の順位の人がいない場合に、初めて相続人となります。

 

相続順位は、その人から別の人に引き継がれることがあります。

例えば、被相続人の子はすでに死亡しているが孫がいる場合、本来の第1順位者は子ですが、この順位は孫に引き継がれます。

この場合、第1順位となる孫がいるため、第2順位以下の人は相続人となりません。

 

具体例を見てみましょう。

亡くなった方(被相続人)に、配偶者と、子2人がいる場合、この3人が相続人となります。

一方、この例において、2人の子のうち1人は亡くなっているが、その人に子(被相続人から見ると孫)がいるような場合、配偶者、存命の子、孫の3人が相続人となります。

 

こうして言葉だけで説明すると色々とややこしいですが、理屈さえわかれば、相続人が誰かを判断することはそう難しいことではありません。

もしご不明な点があれば、お気軽にご相談いただければと思います。

2015.08.09更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

電車内で痴漢に間違われた場合、どのように対処したら良いでしょうか?

「自分は痴漢をしていないのだから、きちんと話し合えばわかるはずだ」。こうした考えから、被害を訴える女性と一緒に駅員室で話し合うべきと考える方も多いようです。

しかし、このような対応は間違いです。駅員室に一緒に行くと、本当は痴漢なんかしていないにもかかわらず、女性側の言い分のみを根拠に十中八九逮捕されてしまいます。そして、そのまま10~20日程度勾留されることが予想されます。

ひとたび逮捕勾留されてしまうと、長期間仕事を休まざるを得なくなります。また、勤務先には、家族の方を通じて仕事をしばらく休む理由を告げなければならないでしょうが、「痴漢の疑いで逮捕勾留されました」とはなかなか言えません。

そのようなことから、逮捕勾留されてしまうと、早く釈放されたいがためにやってもいない痴漢の事実を認めてしまう、となりかねません。

 

こうした事態を防ぐためには、逮捕される前にその場を立ち去ることが一番です。

そうすれば、基本的に逮捕されるようなことはなく、「自分は痴漢をやっていない」ということを正々堂々と争うことが出来ます。

ただし、その場から走って逃げるようなことは、お勧めしません。その場から逃げようとすると、「本当に痴漢をしていたから、逃げたのだ」と受け取られてしまい、後々そのことを不利益に取り扱われるおそれがあります。

そこでお勧めするのが、きちんとご自身の名前や連絡先等を告げた上で(あるいは名刺等を交付した上で)、正々堂々とその場を立ち去ることです。

 

一般的に、痴漢事件は、他の犯罪と比べてえん罪率が高いと言われています。

その一つの原因は、逮捕勾留されてしまうと、一日も早く釈放されたいがために、やってもいない事実を認めてしまうことがあるからです。

松戸やその周辺地域から東京方面に通勤されている方は、常磐線や千代田線などで満員電車に乗り合わせることが多いと思います。万が一痴漢に間違われたとしても、上記を参考に冷静に対処していただければと思います。

2015.08.08更新

松戸の弁護士の島田亮です。

 

誠法律事務所は、来週1週間(8月10日~8月14日)を夏季休業期間とさせていただきます。

業務再開は、土日を挟んだ8月17日(月)からですので、よろしくお願いいたします。

まずは、無料相談をご利用ください。 弁護士島田亮 TEL:047-367-5301
top_img10_sp.png
直接会って相談する
直接会って相談する