松戸の弁護士の島田亮です。
先日、「福祉の『支援』が『監視』に変わる? これって『刑罰』? 法制審で語られる『社会内処遇』を考える」というシンポジウム(千葉県弁護士会と埼玉弁護士会が主催)に出席しました。
現在、法制審議会では、起訴猶予に伴う再犯防止措置の法制化が議論されています。
大雑把に言ってしまえば、検察官が、被疑者が守るべき事柄を決めて指導を行い、その状況を踏まえて起訴するかどうかを判断しようとするものです。
このような制度には、実は、重大な問題があります。特に大きな問題は、手続に裁判所の関与がないことです。
本来、被疑者・被告人に不利益な処分を行うためには、裁判所の判断が必要です。
ところが、現在議論されている制度は、裁判所の関与がないところで、被疑者に対する「指導」という名目のもとに一定の制約が加えられることとなります。
このような制度では、検察官が「危険」とみなした被疑者に対し、保安処分的に「指導」が行われる懸念が拭えません。
ところで、この制度の中では、検察官が指導を行う際に、福祉関係者が重要な役割を果たします。
そして、今回のシンポジウムでは、多くの福祉関係者が参加し、意見を述べていました。
中でも印象に残ったのは、「検察官の手先として『ちくり屋』になってしまったら、対象者との信頼関係が築けず、福祉活動を行うことが出来なくなる」という言葉でした。
本来、福祉とは、対象となる方を支援し、その方の権利を擁護するためのものです。一方、検察官は犯罪捜査及び訴追を行う者であり、目指すのは「社会の安全」になります。
このように、検察と福祉とが異なる目的を持つにもかかわらず、福祉を検察のもとに置き、検察官が福祉を利用することには、大きな問題がありそうです。
今後、法制審議会の議論がどのように進んでいくのか、注意深く見守る必要があります。
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