松戸の弁護士の島田亮です。
数年前に取り扱った刑事事件の話を、少しさせていただきます。
柏市内で交通事故があったのですが、それをきっかけに男性Aと男性Bが口論となりました。
そして、Bが、口論の際にAから暴行を振るわれて怪我をしたとして、被害の届出をしました。これが傷害事件として立件され、私がAの刑事弁護を担当することとなりました。
Bは、怪我に関する診断書を提出していました。そして、検察官は、診断書があるのだからBは怪我をしているし、Bが怪我をしている以上、Aによる暴行があったのだと主張しました。
しかし、私が当該診断書の作成医に確認したところ、その診断に客観的根拠はなく、Bの訴える症状がそのまま診断書に記載されていたことがわかりました。このような診断書では、怪我があった事実の立証としては不十分なはずです。
そうすると、暴行の存在に関する証拠はB供述しかないこととなりますが、B供述には不自然な点が沢山ありました。
さらに、この事件の後、Bは、Aの勤務先に連絡し、不合理な要求を繰り返していました。Bには、交通事故の交渉を有利に運ぶため、殊更に「Aから暴力を受けた」と虚偽の供述を行っている可能性もありました。
そこで、私は、診断書が信用できないことやBの話が信用できないことなどを、裁判で主張しました。また、Bに虚偽供述の可能性があることについて、立証を行いました。
その結果、この事件は、一審(千葉地方裁判所松戸支部)では有罪となりましたが、二審(東京高等裁判所)で逆転無罪となり、確定しました。
この事件の弁護人を務めている間、私は、「Aが有罪になるはずがない」と考えていました。なぜなら、暴行に関する証拠はほぼB供述しかないところ、B供述にはおかしな点が色々とあったからです。
しかし、最終的には無罪となったものの、一審では有罪となってしまいました。
改めて、日本の刑事裁判官が、いかに無罪判決を書きたがらないかということがわかった次第でした。