松戸の弁護士の島田亮です。
精神疾患を有する方が、犯罪を犯してしまうことがあります。
このような場合に問題となるのが、「責任能力」の有無です。そして、責任能力がなければ、その人は「無罪」となります。
私も、時折、こうした方の弁護を担当することがあります(現在も、責任能力が問題となる事例を複数件取り扱っています。)。
また、一般の方より、「犯罪を犯しているにもかかわらず、なぜ無罪になるのでしょうか?」と質問を受けることもあります。
もちろん「犯罪を犯しているのに無罪になるのはおかしい」という感覚は、理解できます。しかし、責任能力がない人を処罰できないこと(有罪にできないこと)については、理由があるのです。
犯罪を犯した人に有罪判決を言い渡すということは、その人に刑罰を科すことを意味します。
それでは、なぜ犯罪を犯した人は、刑罰を科されなければならないのでしょうか?
それは、その人が、犯罪を避けようとすれば避けられたにも関わらず、犯罪を犯したからです。つまり、犯罪を犯したことについて、その人自身に「責任」があるからです。
そして、犯罪を犯したことについて、その人自身に責任がない場合が、「責任能力」を欠く場合なのです。
例えば、統合失調症の方が、妄想に突き動かされて犯罪を犯してしまうことがあります。
この場合、統合失調症に罹患したことはその人の責任ではありませんし、妄想に突き動かされたこともその人の責任ではありません。それにもかかわらず、その人に刑罰を科すことは出来ないのです。
こうした方に必要なのは、適切な治療であり、適切な福祉サービスです。
適切な医療措置や福祉サービスこそが、その人を犯罪から遠ざけることにつながります(こうした方にただ刑罰を科したとしても、病状やその人を取り巻く環境は良くならず、再犯を防ぐことは出来ません。)。
ところが、我が国の現状では、適切な医療措置や福祉サービスを受けられないでいる方が、沢山いらっしゃいます。
精神疾患を有する方による犯罪を防止するためには、精神医療や福祉の向上こそが真に必要な事柄なのです。