松戸の弁護士の島田亮です。
そもそも刑事事件では、なぜ被疑者を逮捕勾留することが許されているのでしょうか?
その人が悪いことをしたから、罰として逮捕勾留するのでしょうか?
そうではありません。逮捕勾留することが許されているのは、その人が証拠隠滅をしたり、逃走したりするのを防ぐためです。
したがって、証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められない場合、逮捕勾留することは出来ません。
刑事事件の被疑者・被告人も、有罪判決が確定するまでは無罪であることが推定されます(これを「無罪推定原則」と言います。)。
逮捕勾留とは、無罪が推定されている人に対し行われるものですから、証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められる場合でなければ許されないのです。
証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められるかについて、チェックを行うのは裁判官です。
裁判官は、証拠隠滅や逃走のおそれが具体的に認められる場合に限って、逮捕状・勾留状を発付することが許されています。
ところが、実際には、裁判官によるチェックはほとんど機能していません。
平成25年度の司法統計から数字を拾ってみます。
全国で勾留状が発付された件数は11万6181件であるのに対し、却下された件数は2308件です。勾留状が発付された割合は、98.05%と非常に高率となっています。
さらに凄いのは、逮捕状の発付率です。
全国で逮捕状が発布された件数は48万0432件であるのに対し、却下された件数は2546件です。逮捕状が発付された割合は、実に99.47%となります。
このように、逮捕状・勾留状の発付率が高率となっているのは、裁判官が、捜査側の言い分をそのまま鵜呑みにしているからに他なりません。
これが「人質司法」と呼ばれる現状を招き、取調べの中で自白が強要されるなど、違法不当な捜査が実施される温床となっているのです。
このような現状は、何とかして改善していかなければならないと思います。