松戸の弁護士の島田亮です。
現在、刑事司法手続の改正法案について参議院で審議中です。
そして、同法案が成立してしまうと、新たに司法取引が導入されることとなります。
しかし、以前からお伝えしていますが、同法案の規定する司法取引には重大な問題点があります。
司法取引の最大の問題点は、「引っ張り込みの危険」です。
例えば、ある事件の被疑者Aが、「実は、主犯格であるBと一緒に事件を起こした」と供述した場合において、捜査側とAが司法取引する場合を考えてみましょう。
無論、Aの供述が真実であれば、何の問題もありません。しかし、Aの供述が間違いなく真実だとは限りません。
そして、もしAの供述が真実でないのであれば、司法取引が行われることにより、無実のBを事件に引っ張り込んでしまうこととなります。
「司法取引が適正に行われたことを担保するため、司法取引には弁護人が必ず関与することとなっている」、と説明されています。
しかし、ここで注意しなければならないのは、司法取引に関与するのは、BでなくAの弁護人だということです。
言うまでもなく、Aの弁護人には、Aのために全力を尽くして弁護活動をすべき義務があります。
そうすると、Aの弁護人は、Aの利益のため弁護活動を行うのであり、その一環として司法取引の成立を求める弁護活動を展開することが想定されます。
このようなAの弁護人が関与することによって、果たしてBに対する「引っ張り込みの危険」を防ぐことが出来るでしょうか。答えは、当然「NO」です。
本法案の規定する司法取引には、重大な問題があります。
この法案が成立してしまえば、新たなえん罪を生み出す原因となりかねません。